犬童（いぬどう）という名字は、日本でも比較的珍しい姓であり、特に九州地方を中心として受け継がれてきた歴史を持つ名字として知られています。犬を示す「犬」と、子どもを表す「童」が組み合わさった表記は他に類例が少なく、名字として独自の成立背景を持っている点が特徴です。古文書や郷土資料の中には犬童姓の存在を示す記述があり、地名・伝承・家系史が複雑に絡み合って成立した姓であると考えられています。本記事では、犬童さんの名字の意味、成り立ち、歴史的背景、読み方の種類、人数や分布について、確認可能な事実にもとづいて詳しく解説します。
犬童さんの名字の意味について
犬童という名字は、「犬」と「童」という二つの漢字から構成されています。「犬」は文字どおり動物の犬を表し、日本の地名・名字では動物名が付いたものが数多く見られます。犬は古代から身近な動物であり、忠誠心や狩猟との結びつきから神話や伝承にも多く登場します。
一方、「童」は子どもを示す語ですが、名字や地名においては童子・童（どう）などを含む語が寺社・伝承・信仰に由来する場合が多く、必ずしも年少者を指すとは限りません。日本の民俗では「童子」が神の使いや精霊を象徴する語として用いられる場合があり、地名や寺院名にも広く残っています。
この二つの漢字を合わせた「犬童」という表記は非常に珍しく、以下のような意味・由来が考えられています。
- 犬に関する伝承や祭祀に関係する「童子」を示す語に由来する可能性
- 犬を祀った社や塚、伝承地に「童」や「童子」の語が付随した地名から派生
- 古くからの地名「犬童（いぬどう）」が存在した地域の居住者が姓として名乗った
名字辞典でも犬童姓は「地名や伝承に基づいた姓である」とされており、犬と童という漢字の組み合わせが、古い信仰や地域の伝承と関わる語であったことがうかがえます。
犬童さんの名字の歴史と由来
犬童姓の由来は、全国の名字の中でも特に地域的・歴史的背景が明確な例とされています。主に九州地方においてこの姓が古くから存在していたことが、寺院過去帳、郷土史、村落文書などの資料から確認されています。
特に熊本県・宮崎県には「犬童」「犬童原」「犬童谷」など、犬童の名が含まれる地名が古い文献に登場することが知られており、これらの地域には犬童姓を名乗る家系が集中しています。このことから、犬童姓が地名に由来する姓であることは、名字学の観点から見ても強い根拠があります。
また、犬童姓は古くから地域の豪族・名主層として記録されている例もあり、江戸時代の文書や神社古文書には犬童姓の人物が登場することがあります。特に九州南部においては、犬童姓が庄屋や地域の指導的立場にあった家系として残っているケースがあり、その成立が中世以前に遡る可能性も指摘されています。
犬童の名が伝承に現れる例として、「犬童丸（いぬどうまる）」などの伝説的存在が語られる地域もあり、地名・人物名・信仰が混ざり合って姓が定着したと考えられています。日本の多くの姓と同様、犬童姓も複数の系統があると見られ、地域ごとの歴史的背景によって成り立ちが異なる場合があります。
犬童さんの名字の読み方（複数の読み方）
犬童姓の読み方には、確認されている範囲で以下のものがあります。
- いぬどう（もっとも一般的）
- いぬどう（童を「どう」と読む慣用音のみが確認される）
犬童姓は全国的に見ても「いぬどう」と読む例が大多数であり、他の読み方はほとんど存在しません。名字辞典や電話帳データベースにおいても、「いぬどう」が標準的な読みとして掲載されており、地域差も非常に小さいことが特徴です。
なお、「童」を「わらべ」と訓読する例は一般語としては存在しますが、名字としては用いられておらず、犬童姓で別読みが発生した記録は確認されていません。
犬童さんの名字の分布や人数
犬童姓は全国的には珍しい姓であり、名字分布データによると全国で数千人規模と推定されています。特に九州地方に集中していることが大きな特徴です。
犬童姓が多く見られる地域としては次のとおりです。
- 熊本県
- 宮崎県
- 鹿児島県
これらは九州南部を中心とした地域で、犬童姓はこのエリアに偏在していることが確認できます。熊本県では特に犬童姓の出現頻度が高く、郷土資料にも犬童家の記録が残されています。この分布は、犬童姓が地名・伝承に由来する姓であることを裏づける事実ともいえます。
一方で、近代以降の移動により、関東地方や関西地方、海外に移住した家系も少なくありませんが、総数としては依然として九州地域の集中度が高い状況が続いています。
犬童さんの名字についてのまとめ
犬童（いぬどう）という名字は、日本の中でも特に地域性が強い姓であり、古い地名や伝承を背景として成立したと考えられています。「犬」と「童」という個性的な漢字の組み合わせは、古い信仰や伝承と強い結びつきを示し、九州地方では地名にもこの語が残っていることから、犬童姓の起源はこの地域に求められるとする見解が多数あります。
読み方はほぼ「いぬどう」に統一されており、地域ごとの差は少ない姓です。人数は全国で数千人程度と推計され、珍しい名字ではありますが、九州を中心に確かな歴史を持って受け継がれてきた姓であることが分かります。地名姓としての特性、伝承との結びつき、地域史との関係から見ても、犬童姓は日本の名字文化において興味深い存在です。