漢字一字が持つ意味と歴史は、その国の文化や言葉の背景を深く理解する鍵となります。日本の常用漢字「去」は、日常生活で頻繁に使われる文字でありながら、その成り立ちや多様な用法を深く知る機会は意外と少ないものです。本記事では、「去」の語源から熟語、ことわざに至るまで、その全貌に迫ります。
去の成り立ち(語源)
漢字「去」は、古代中国において、何かが「去る」すなわち「離れる」様子を表すために作られました。象形文字から発展し、最終的に「土」から「卩」(せっつ、折り曲げる意)が離れる形をとって、「去」という形に落ち着きました。この形は、物事が去っていく様子を象徴しています。
去の意味と用法
「去」は「離れる」「去る」「過ぎる」といった意味を持ちます。時間や空間を離れる際に用いられることが多く、具体的な動作を示す場合と、抽象的な概念を示す場合があります。また、過去の事象を指す際にも使用され、「去年」「去ることながら」といった形で使われます。
去の読み方・画数・部首
漢字「去」は、そのシンプルな形状からは想像もつかないほど、豊かな読み方と意味を持っています。
- 読み方: 音読みでは「キョ」「コ」、訓読みでは「さ.る」「い.なす」「い.ぬ」「お.う」と読まれます。
- 画数: 「去」は総画数が5画です。
- 部首: 部首は「土」(つちへん)です。
去を使った熟語・慣用句・ことわざとその意味
「去」を含む熟語や慣用句、ことわざは日本語において重要な役割を果たしています。以下にその一部を紹介します。
- 去就(きょしゅう):去るべきか、就くべきか。進退の意志決定を迫られる状況を表します。
- 去来(きょらい):行ったり来たりすること。また、心の動きや思いの変化を表すこともあります。
- 去勢(きょせい):動物に対して生殖能力を奪う手術を行うこと。比喩的に、力や意志を奪うことを指すこともあります。
- 去年(きょねん):一年前の年。前年を指します。
- 去ることながら:それはさておき。話題を変える際に用いられる表現です。
去についてのまとめ
漢字「去」は、そのシンプルな形状とは裏腹に、多岐にわたる意味と用法を持つ文字です。日常会話から文学的表現、さらには慣用句やことわざに至るまで、日本語の中で重要な役割を果たしています。「去」を知ることは、言葉の奥深さを知ることであり、私たちの言葉が持つ豊かな表現力を再認識する機会と言えるでしょう。