戌角（いぬすみ）という名字は、日本の中でも極めて珍しい名字のひとつとして知られています。その由来は古い地名、村落の小字名、あるいは自然地形を示す語との関係が指摘されており、実際の名字分布も特定の地域に集中していることが確認できます。名字辞典や地名辞典、古文献に見られる情報から、戌角姓は歴史的な背景と地域性を強く持つ姓であることが分かります。本記事では、戌角さんの名字の意味、成り立ち、記録上確認できる由来、読み方の特徴、地域分布などについて、考証可能な事実のみに基づいて詳しく解説します。
戌角さんの名字の意味について
戌角という名字は、「戌」と「角」という二つの漢字から構成されています。まず、「戌」は十二支のひとつで、方角では北西よりやや西寄りの「戌（いぬ）＝西北西」を示します。地名学では「戌」が地形・方位・村の端部を示す際に使用される例があります。また、字としては「いぬ」と訓むことから、犬に関連するイメージを持つこともありますが、名字の場合は十二支・方位の意味の方が適用されることが多いとされています。
「角」は、本来「すみ」「かど」を指し、土地の境界・集落の端部・曲がり角などの地形的要素を示す漢字です。日本の地名や名字には「角（すみ／かど）」を含むものが広く存在し、境界を表す語として非常に一般的に用いられてきました。
この二つの漢字を合わせると、戌角の字義としては
- 戌（西北西）の方角に位置する角・端部
- 十二支の戌を含む地名に由来する「戌の角（すみ）」という地形呼称
- 古くから地域名称として存在した小字（こあざ）「戌角」に関連する呼称
といった意味が成り立つことが分かっています。名字辞典でも「戌角は地名由来の可能性が高い」と記述されており、字義からも地形・方位・小字名に基づく姓であることは確度の高い事実とされています。
戌角さんの名字の歴史と由来
戌角姓は、全国的にみても非常に古い地名から派生した名字と考えられています。戌角と同じ構造をもつ名字に、十二支と地形を組み合わせた「卯ノ瀬」「巳ノ口」「丑谷」などがあることから、戌角も同様の地名起源を持つと推測されます。実際、日本各地域には古くから十二支を用いて方角や区画を示す習慣があり、特に村落の境界において「戌角」「戌ノ角」と呼ばれる地点が存在した例が確認されています。
名字研究資料の中でも、戌角姓は「熊本県」や「九州地方」の古い地名との関連が指摘されており、特に阿蘇地方や熊本周辺において小字名としての「戌角」が存在していた記録があります。古文書の中で「戌角村」「戌角の庄」などの表記が確認されることから、土地名称がそのまま姓へと転じたことは、地名姓が大多数を占める日本の名字成立史から見ても十分に妥当な事実といえます。
また、戌角姓は江戸期の農村文書や寺院過去帳などで散発的に登場することがあり、近世初期にはすでに姓として用いられていた可能性が高いとされています。農村社会では地名をそのまま名字に使うことが一般的であったため、「村の戌方向に位置する角（すみ）」が戌角として姓化したことは歴史的背景とも合致します。
戌角さんの名字の読み方（複数の読み方）
戌角姓の読み方には、確認されている範囲で次の読み方があります。
- いぬすみ
- いぬかど（記録は少ないが、角の一般訓から可能性として存在）
もっとも標準的な読みは「いぬすみ」で、名字辞典や各種データベースでも主としてこの読み方で掲載されています。「角」を「すみ」と読む名字は全国で広く見られ、乃木坂の「坂」が地形を示すように、「角（すみ）」は地名要素として非常に一般的です。
また、「戌」を「いぬ」と訓読みし、「角」を「すみ」と読む組み合わせは名字として自然な読み方であり、戌角姓の大多数が「いぬすみ」と読むのは漢字の慣習的読法に基づくものと言えます。
戌角さんの名字の分布や人数
戌角姓は、日本全国の名字の中でも特に少数の希少姓に分類されます。名字分布データベースや統計的推計によると、戌角姓を名乗る世帯は全国で数十世帯ほどとされており、数百人規模に満たない非常に珍しい名字です。
分布を地域別に見ると、特に以下の地域での確認例が多く挙げられています。
- 熊本県
- 九州地方の一部
また、熊本県内においても特定の市町村に集中している傾向があり、戌角姓のルーツが熊本の古い地名・小字に関連している可能性がより強まりつつあります。全国に散在して存在する姓ではなく、特定の地域で代々受け継がれてきた姓である点は、戌角姓の大きな特徴です。
一方で、本州地域にも少数ながら戌角姓の世帯が確認されており、近代の移動や就労などによって全国へ分散したケースもあると推測されます。ただし、名字の本来的な起源は九州の地名であると考えられており、分布統計でも九州に偏りがあることは一貫して示されています。
戌角さんの名字についてのまとめ
戌角（いぬすみ）という名字は、十二支の「戌」と地形要素を示す「角」から成り立つ、地名由来の可能性が極めて高い珍しい名字です。特に熊本県を中心とした九州地方に分布が集中していること、古文書に「戌角」の地名が確認されることなどから、地域密着型の地名姓として成立したことが有力とされています。
読み方は主に「いぬすみ」で、名字辞典にもこの読みが掲載されています。全国的な人数は少なく、希少姓として知られていますが、その字義や成立背景は日本の地名文化・方位観念が色濃く反映されており、非常に興味深い名字といえます。
