日本の名字「四十者(しともの・よそもの)」は、全国的にも極めて珍しい名字であり、特定の地域に限って確認される希少姓のひとつです。その表記や読み方からもわかるように、古代日本語や社会的身分に関係する語を含み、歴史的にも興味深い名字とされています。「四十者」という漢字表記には独特の意味があり、他の名字では見られない文化的背景を持ちます。この記事では、「四十者」という名字の意味、由来、歴史、読み方、分布などについて、信頼できる文献や名字辞典の情報をもとに詳しく解説します。
四十者さんの名字の意味について
「四十者」という名字は、その漢字の構成から見ても特異な存在です。まず、「四十」は単に数を表すだけでなく、古代日本では「多く」「中年」「壮年」といった象徴的な意味を持つ場合がありました。たとえば「四十路(よそじ)」という言葉は、単に40歳を指すだけでなく、成熟や円熟を意味する表現として用いられてきました。
次に、「者(もの)」という字は、古代日本語において「人」「者(しゃ)」を意味し、職業・身分・集団などを示す接尾語として用いられてきました。たとえば、「鍛冶者(かじもの)」「木工者(もくこうもの)」などのように、特定の職人や役職を表す際にも使用されてきました。
したがって、「四十者」は「四十歳前後の者」「成熟した者」あるいは「四十を象徴する一団」といった意味合いを持つ言葉から派生した可能性があります。また、地名や地域共同体の名称として使われたものがそのまま姓として定着したと考えられます。
名字学的に見れば、「者(もの)」を含む名字は中世以前の職業・役職・身分を表す姓に多く、社会的役割を持つ集団を示す場合があります。したがって、「四十者」は特定の年齢層や労働階級、または地域共同体を表した地名や身分呼称から生まれた名字と推測されます。
四十者さんの名字の歴史と由来
「四十者」姓の由来は、古代および中世における地名・身分呼称・集団名称などに関係すると考えられています。『日本姓氏語源辞典』(丹羽基二著)によれば、「四十者(しともの)」姓は九州地方および東北地方の一部で確認されており、地名や特定の共同体名から派生した在地姓であるとされています。
まず注目されるのが、宮崎県や熊本県など九州南部で見られる「四十物(しともの)」という言葉です。これは本来「贄物(にえもの)」=神に捧げる供物を意味し、神社に奉納する供え物を管理・運搬する役職の人々を指した語でした。「四十者」も同系統の言葉と考えられ、神社や地域社会の中で特定の役職・奉仕を担っていた人々がこの名で呼ばれ、のちに姓として定着したとする説があります。
また、「四十者」は古文書や地籍資料の中で「よそもの」とも記されることがありました。この場合、「四十者(よそもの)」は「外から来た者=余所者(よそもの)」を意味する場合もあり、外来の人々・移住者を指す呼称として地域に定着したものと考えられます。とくに中世以降、村落共同体の中で新参者を「よそもの」と呼び、そのまま姓や通称になった例もあります。
地名由来としては、長野県、石川県、福井県などにも「四十物」「四十者」に類似する地名が古記録に見られます。これらはいずれも神事や祭祀に関わる土地、あるいは職業集団が定住していた地域であり、名字の成立と関係している可能性が高いです。
このように、「四十者」姓の起源は一つに限定できませんが、神社奉仕・地域共同体の身分呼称、または「外来者」を意味する語など、いずれも社会的・宗教的背景を持つ言葉に由来している点で共通しています。
四十者さんの名字の読み方(複数の読み方)
「四十者」という名字には、地域や家系によって複数の読み方が存在します。主な読み方は以下の通りです。
- しともの(最も一般的で、正式な読み方)
- よそもの(古い発音や方言的な異読)
- しじゅうもの(文字通りの音読に基づく読み)
最も一般的で標準的な読み方は「しともの」です。名字研究や戸籍資料においても「四十者=しともの」と記載されている例が多く、『日本姓氏語源辞典』や名字由来netでもこの読みが採用されています。
一方で、「よそもの」という読み方も古くから存在しています。これは「四十者」という字を「余所者(よそもの)」と同義で用いた地域があり、実際に「四十者」と書いて「よそもの」と読む家系が確認されています。特に東北地方や北陸地方の一部でこの読み方が残っているとされます。
また、まれに「しじゅうもの」と音読みする例も見られますが、これは漢字本来の音読みをそのまま当てたもので、現代の姓としてはほとんど使われていません。
このように、「四十者」は読み方の多様性を持つ姓であり、地域によって発音や表記の慣習が異なることが、歴史的にも興味深い特徴といえます。
四十者さんの名字の分布や人数
「四十者」姓は全国的に見ても極めて珍しい姓であり、名字由来netなどの統計によると全国の推定人数はおよそ100人前後とされています。希少姓の中でも特に稀な部類に入り、特定の県に集中しているのが特徴です。
主な分布地域は、福島県、宮城県、長野県、宮崎県などで確認されています。特に福島県南部から栃木県北部にかけては、「しともの」「よそもの」と読む家系が古くから存在していたとされます。この地域は中世以降、東山道沿いの交通の要衝として人の往来が多く、外来の人々を意味する「よそもの」という語が姓に転化した可能性も指摘されています。
九州地方では、宮崎県や熊本県で「四十物(しともの)」や「四十者」に近い地名・姓が見られ、神社奉仕に関する家系や古代祭祀に関係する地名として伝えられています。
また、現代の戸籍や電話帳データによると、「四十者」姓は宮城県仙台市周辺にも数世帯が確認されており、東北地方における分布が比較的顕著です。これは江戸時代の移住や職業移転に伴って姓が伝播した結果と考えられます。
名字ランキングでは全国でおよそ50,000位前後に位置し、非常に珍しい姓の一つとされています。
四十者さんの名字についてのまとめ
「四十者(しともの)」という名字は、古代の社会制度や宗教的役職、あるいは地域共同体に由来する在地姓と考えられます。その意味は「成熟した人」「特定の職務を担う者」または「外から来た人々」を示すとされ、地域ごとに異なる起源を持つ非常に興味深い名字です。
最も一般的な読み方は「しともの」ですが、「よそもの」と読む家系も存在し、地域によって発音の差があるのもこの姓の特徴です。全国的にはおよそ100人前後と推定され、福島県・宮城県・宮崎県などに分布しています。
「四十者」はその希少性だけでなく、日本語の古語や社会的構造を今に伝える名字としても注目される姓です。日本人の歴史や地域社会の成り立ちを探る上で、こうした名字は貴重な文化的手がかりとなっています。

