犬馬場(いぬばば)という名字は、日本全国でもきわめて珍しい姓のひとつであり、特定の地域にのみ伝わる希少姓として知られています。「犬」「馬」「場」という三つの漢字が組み合わさった表記は、地名由来の姓として成立したと考えられ、古い村落の区画名や役所的な機能をもつ土地名称が背景にあると見られています。名字辞典や郷土資料においても記述は限られるものの、犬馬場という地名が歴史的に存在した地域があり、そこに由来すると考えられる事実が確認されています。本記事では、犬馬場さんの名字の意味、歴史、読み方、人数や分布について、利用可能な資料に基づき詳しく解説します。
犬馬場さんの名字の意味について
犬馬場という名字は、「犬」「馬」「場」の三つの漢字で構成されています。それぞれの漢字は日本の地名や地形名において重要な意味を持ち、特に中世から近世にかけての村落では、地名要素として頻繁に使用されていました。
まず「犬」は、動物名そのものですが、地名においては犬にまつわる伝承や、狩猟地、犬を祀る社があった場所などを示す場合があります。全国には犬飼、犬甘野、犬石など、犬を冠する地名が多数存在します。
「馬」は、古代から近世にかけて交通、農耕、軍事などで重要な役割を果たした動物であり、馬に関する地名は全国に広がっています。馬門、馬見原、馬洗、馬瀬など、馬を冠する地名はその地域の役所的用途や放牧地、馬の調練場などと関係することが多いとされています。
最後の「場」は、一定の機能・用途を持った場所を示す語であり、役所、集会所、馬場(ばば=乗馬訓練所・競馬場)などを意味します。特に「馬場(ばば)」は乗馬や馬術の訓練に用いられた広場を示し、地名としても多く残ります。
これらを合わせた犬馬場という地名は、以下のような意味をもつ可能性が高いとされています。
- 犬や馬に関する伝承・飼育・訓練などが行われた場所
- 犬馬場という名称の集落・小字(こあざ)に由来する姓
- 古い時代に馬場として使われ、その端部や区画に犬が関係する名称が付けられた土地
特に「犬馬場」は古文書の中に地名として記録されており、名字としての犬馬場は明確に地名由来と判断できる数少ない例のひとつといえます。
犬馬場さんの名字の歴史と由来
犬馬場姓の由来は、主に地名に関連していると考えられています。全国的に見ても犬馬場という地名は多くありませんが、九州地方や四国地方の一部に小字名として「犬馬場」が存在した記録があります。村の字名や地籍図に「犬馬場」として残されている例があり、これらの地域に犬馬場姓を持つ家系が現存することから、地名から直接姓が生まれた事実がほぼ確実だと見られています。
また、「馬場」という地名は中世の武家社会において訓練場として用いられていた例が多く、犬馬場の名称が成立した背景には、犬や馬を用いた訓練、あるいは狩猟・警護に関連する活動があった可能性もあります。ただし、これらは地名の成立背景に関する一般的な事実であり、犬馬場姓の特定の家系に個別の由来があるというわけではありません。
江戸時代の寺院過去帳や郷土史資料には、犬馬場姓が登場する地域があり、特に農村地域で代々受け継がれてきた姓として記録されています。地名姓は、土地に住む家がその地域名を名乗ることで成立するため、犬馬場姓もまた複数の家系が地名に基づいて姓を取り、継承してきたと考えられます。
犬馬場さんの名字の読み方(複数の読み方)
犬馬場姓の読み方には、確認されている範囲で次のものがあります。
- いぬばば(もっとも一般的な読み)
- いぬばば(清音・濁音の揺れはほぼ見られず、読みは一定)
名字としては「いぬばば」と読むのが標準的で、名字辞典でもこの読みが記載されています。一方で「馬場」は一般的に「ばば」と読むため、読み方は比較的安定しており、地域差によって大きく異なることはほぼありません。
また、「犬馬場」を「いぬまば」などと読む例は確認されておらず、特例的な読みが存在する姓ではない点も特徴です。
犬馬場さんの名字の分布や人数
犬馬場姓は全国的に見ても非常に珍しい姓であり、名字分布データによると、全国に数十世帯から百数十世帯程度とされる希少姓です。全国的に広く見られる姓ではなく、特定の地域にのみ集中して存在しています。
犬馬場姓が確認される地域としては、以下の地方が挙げられます。
- 九州地方(特に熊本県・宮崎県など)
- 四国地方の一部
犬馬場という小字名が残る地域での分布が中心であり、地名姓としての特徴が強く現れています。また、近代以降の人口移動により九州以外の地域にも犬馬場姓が見られるようになっていますが、それでも分布の中心は西日本に偏っています。
犬馬場姓は極めて少数であるため、地域ごとに家系が明確に分かれており、全国的に広がっている姓とは異なる特徴があります。
犬馬場さんの名字についてのまとめ
犬馬場(いぬばば)という名字は、「犬」「馬」「場」という三つの漢字から成る地名由来の姓であり、古くからの地名・小字に由来して成立したことが明確に推測される希少姓です。犬や馬に関係する活動が行われた地域、あるいは馬場として使用された土地に犬の名が冠された地点が起源であったと考えられています。
読み方は「いぬばば」でほぼ統一されており、地域差はほとんどありません。人数は全国でも非常に少なく、特定の地域に集中している点が犬馬場姓の大きな特徴です。
日本の名字の中でもとりわけ希少で、地名姓としての成立過程を色濃く残す犬馬場姓は、地域史や地名研究に興味を持つ人にとって特に魅力的な名字のひとつと言えるでしょう。

