五百（いほ）は、日本全国でも非常に珍しい名字の一つで、古代語の名残を感じさせる独特の読み方を持っています。「五百」という数字を用いた名字は日本に複数存在しますが、その読みが「いほ」となる例は特に希少で、古代の地名・数量表現・信仰語彙との関連が指摘されることがあります。本記事では、五百姓の意味、歴史的背景、読み方のバリエーション、分布などを、現存する資料に基づき丁寧に解説します。
五百さんの名字の意味について
五百という表記は「五」と「百」に分けられ、数量語として「500」を表しますが、日本の地名・人名では古代的な特別な意味を帯びることがあります。特に「いほ」という読みは、古語で「いほ（いほり）」＝「石室」「岩屋」「祠（ほこら）」を意味する語と関係する可能性が指摘されています。
この名前にはいくつかの意味的背景が推測されます。
① **古代の信仰・祭祀に由来する地名説**
「いほ」は古語で岩屋・石の祠を指し、神聖な場所として祀られていたとされます。こうした地名が後に名字となった例は全国に多く、五百姓も同様に地形・信仰と結びついた可能性があります。
② **数量語の「五百（いほ）」の慣用的用法**
古代日本では「百」「千」などの数字が特別な意味合いで使われることがあり、「五百」は「多くの」「数えきれないほどの」という意味の比喩として使われる場合があります。これが土地の呼称や家の名として使われた可能性もあります。
③ **土地の規模・集落を指す呼称の可能性**
中世の荘園・村落には数字を冠した名称（例：八百、五百、七百など）が見られ、これは税区分や土地規模、あるいは古い伝承に基づく命名の痕跡とされています。
五百さんの名字の歴史と由来
五百姓の由来は地域によって異なる複数のルーツが考えられますが、いずれも古代・中世の地名や土地制度と関わるケースが多く見られます。
① **奈良・平安期の地名に由来する説**
「五百」「五百戸（いほこ）」などの地名が古文献に散見され、これらは土地の規模、石室のある場所、特定の祠を示す名称として使われていました。五百姓はこうした古地名が家名化した可能性があります。
② **中世の荘園支配と関連する説**
荘園には名主（みょうしゅ）や有力農民の家名として地名がそのまま用いられ、五百姓も荘園内の一地域名や小字から発生した名字とみられます。数字の付く地名は、耕作地の区分や社寺領の象徴的命名としても使われていました。
③ **神社・祠を中心に発展した集落の呼び名**
「いほ」の語義から、岩屋・磐座（いわくら）など神聖視される自然物の周囲に形成された集落が「五百」と呼ばれた可能性もあります。これが名字化し、地域に定着したと考えられます。
④ **明治期の名字制定で地名を踏襲した例**
明治初期の平民苗字必称義務化では、多くの家庭が祖先の出身地名・小字を名字として採用しました。現在の五百姓の大半は、この時期に地域の古地名を基に名字を決めた家系であるとみられます。
五百さんの名字の読み方（複数の読み方がある場合はわかる限りすべて記載）
五百（いほ）の読みは以下のものが確認されています。
・いほ（もっとも一般的に確認される読み）
・いお（地域による揺れとして少数例）
特に「いほ」という読みは古語由来であり、年代を感じさせる珍しい読み方として知られています。表記が同じでも地域差によって読みが異なることがあるため、戸籍上の読みは家ごとに異なる場合があります。
五百さんの名字の分布や人数
五百姓は全国的に見ても非常に珍しい名字で、推定人数は数十人〜100人未満とみられています。最新の名字データから確認される主な分布地域は以下の通りです。
【主な分布地域】
・和歌山県
・奈良県
・大阪府
・兵庫県
特に紀伊半島を中心とした関西地方で見られる傾向があり、古代の信仰文化や地名の成り立ちと関連している可能性があります。中でも山間部や旧村落に集中しているケースが多く、古い家系が地域に根付いた形で存続していると考えられます。
五百さんの名字についてのまとめ
五百（いほ）は、日本でもきわめて珍しい名字であり、数字を用いた表記でありながら古語由来の独特の読み方をもつ姓です。「五百」という字は数量以外に古い地名・信仰・地形を示す意味を持ち、土地の歴史と深く結びついた姓であることがうかがえます。
読み方は主に「いほ」で、関西地方を中心にわずかに分布しています。古代の地名や自然崇拝、村落形成の歴史を感じさせる名字であり、日本の姓文化の奥深さを象徴する興味深い一例といえるでしょう。
